
伝承
白山比咩神縁起は、石川県白山市を入口にたどる伝承。石川県白山市を代表地点として、寺社縁起・地名由来の文脈で語り継がれる物語を整理する
白山比咩神縁起(はくさんしらやまひめしんえんぎ)は、加賀・越前・美濃国境にそびえる白山(はくさん、標高 2,702 m)の女神・白山比咩大神(しらやまひめのおおかみ)の創祀を語る縁起である。養老元年(717 年)、越前の僧・泰澄(たいちょう)大師が白山に登り、御前峰(ごぜんがみね)の頂で十一面観音の化身である女神を感得した。女神は伊邪那美神(いざなみのかみ)または菊理媛神(くくりひめのかみ)として記紀に登場する神格と同体視され、加賀馬場(かがばば、白山比咩神社)・越前馬場(えちぜんばば、平泉寺)・美濃馬場(みのばば、長滝白山神社)の三馬場(さんばば)が登山口として整備された。中世には全国の白山信仰の中心地となり、修験道の修行地として広く知られた。
縁起は三段で構成される——(一)泰澄大師の登拝と十一面観音感得、(二)女神の神道的同定(菊理媛神・伊邪那美神との習合)、(三)三馬場の整備と全国白山信仰の拡張。北陸の高峰に女神を祀る山岳信仰の典型で、泰澄を開祖とすることで仏教的縁起の枠組みを与え、菊理媛神を本地(ほんち)とすることで神道的同定を完成させる。神仏習合期に成立した山岳霊場縁起の代表例である。
中心比定地は石川県白山市三宮町(さんのみやまち)の白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ、加賀馬場)。白山頂上の白山比咩神社奥宮(御前峰、海抜 2,702 m)まで参道が続く。福井県勝山市平泉寺町(へいせんじちょう)の平泉寺白山神社(越前馬場)は中世大寺院の遺構を保つ国の史跡で、戦国期の城下町跡として発掘調査が進む。岐阜県郡上市白鳥町の長滝白山神社(美濃馬場)も三馬場の一翼として保たれる。白山国立公園(石川・福井・岐阜・富山にまたがる)として自然環境とともに保全される。
『泰澄和尚伝記』(中世成立、複数の写本)、『白山之記』、『元亨釈書』巻十八、『扶桑略記』。神社の本地に関する記述は『神道集』『塵添壒嚢鈔』に見える。記紀における菊理媛神の登場は『日本書紀』神代上 第五段一書第十(伊邪那岐と伊邪那美の黄泉国別離の場面)。白山比咩神社社伝、平泉寺白山神社の地域資料、文化庁 国指定文化財等データベース「白山平泉寺旧境内」項目を参照する。
寺社縁起・社寺由緒資料 白山比咩神縁起
一次文献寺社縁起・社寺由緒資料 白山比咩神縁起に基づく白山比咩神縁起の代表的な典拠整理。
日本伝説大系
二次資料日本伝説大系などを参照した白山比咩神縁起の地域的受容と異伝の補助確認。
名称や説話、図像、儀礼に重なる具体モチーフです。