
伝承
熊本県の油すまし伝承は熊本県を主な舞台として整理する伝承。油すましとの関係を持ち、一覧や地図で出典、土地、怪異を結ぶ入口になる。
油すまし(あぶらすまし)伝承は、熊本県天草郡(あまくさぐん)河浦町(現・天草市河浦町)の草積峠(くさづみとうげ)に伝わる老人姿の妖怪譚である。峠を越える老婆が孫に向かって「昔、ここに油瓶をさげた化け物が出たそうな」と語ったところ、たちまち杖を突いた異形の老爺が現れて「今もおるぞ」と答え、忽然と消えた、と伝えられる。油すましは灯明用の油を盗む油盗人(あぶらぬすびと)の零落形とも、地霊の擬人化とも語られ、天草の草積峠を本拠とする郷土妖怪として知られる。水木しげるの妖怪マンガを通じて全国的知名度を得た。
物語は三段で構成される——(一)峠での老婆と孫の会話、(二)油すましの突然の出現と応答「今もおるぞ」、(三)消失と峠への記憶の定着。「妖怪の現存証明」を妖怪自らの台詞で行う数少ない例で、語りの自己言及的構造が珍しい。同じく九州の天草・島原のキリシタン記憶を背景に持つ地方妖怪「がんばり入道」「磯女」と並ぶ。
比定地は熊本県天草市河浦町の草積峠(草津峠とも)。天草下島の山中で、近世はキリシタン弾圧の地でもあった天草・島原の隣接圏に位置する。地元では「油すましどん」と親しみを込めて呼ばれ、現在も地域おこしのキャラクターとして石像が建てられている。長崎県の磯女(いそおんな)と並ぶ九州西岸の郷土妖怪。
浜田隆一『天草島民俗誌』(昭和七年・1932 年)、柳田國男『妖怪談義』、熊本県教育委員会編『熊本県史 民俗編』、天草市河浦町史。水木しげる『日本妖怪大全』により全国流布。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
熊本県の油すまし伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、地域の怪異伝承を整理する二次資料。