
伝承
越後国松山の孝子が褒美に賜った鏡を見て亡父の顔と思い込み、妻は夫の浮気相手と誤解する。仲裁の尼が「相手も尼であった」と笑わせて解く中世説話。
松山鏡は、越後国魚沼郡松山(現・新潟県柏崎市松山周辺)を舞台とする中世説話。孝行で名高い庄助なる男が、領主から褒美として鏡を賜る。鏡を知らぬ庄助は、そこに映る自分の顔を亡父の面影と取り違え、毎日箱を開けて拝む。これを見た妻は、夫が箱の中の女と密会していると勘違いし、開けてみて鏡に映る自分の顔を夫の愛人と誤認して激しく嫉妬する。夫婦喧嘩を聞きつけた近くの尼僧が間に入り、鏡を覗いて「相手はもう尼になって出家したから安心せよ」と諭して笑いに変える、というのが基本筋である。
物語は「未知の物(鏡)の誤認」「亡き肉親への投影(夫)」「異性として誤読する嫉妬(妻)」「第三者による滑稽な解消」という、自己認識と他者像の混同をめぐる笑話構造を取る。原型は仏典『百喩経』の「観瓶喩」にあり、中国宋代の笑話集を経て日本に流入、無住の『沙石集』巻九に「鏡を始めて見たる人の事」として収録される。能『松山鏡』、狂言『鏡男』、上方落語『松山鏡』『田舎の士』、長唄『松山鏡』など芸能諸ジャンルに展開した。
新潟県柏崎市松山地区が伝承地として知られ、地域では「松山鏡の里」として顕彰されている。同地の松山神社・正法寺周辺に説話の所縁を伝える石碑が立つ。福島県南会津郡など類話を伝える地域も複数存在する。
無住道暁『沙石集』巻九(弘安六年・1283 年成立)が日本における初期記録。原型は『百喩経』(後秦・五世紀漢訳)。能『松山鏡』、狂言『鏡男』、十八世紀以降の上方落語版にも展開する。
沙石集 巻九
一次文献無住道暁
無住『沙石集』巻九に越後松山の鏡を初めて見た人の説話が収録される。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2569378松山鏡 - Wikipedia 日本語版
二次資料Wikipedia contributors
松山鏡説話の原型(百喩経)、能・狂言・落語への展開に関する二次整理。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E5%B1%B1%E9%8F%A1