
伝承
桜島木花開耶姫伝承は、鹿児島県鹿児島市を入口にたどる伝承。鹿児島県鹿児島市を代表地点として、山岳信仰の文脈で語り継がれる物語を整理する
桜島木花開耶姫伝承(さくらじまこのはなさくやひめでんしょう)は、鹿児島湾に浮かぶ活火山・桜島(さくらじま)と、天孫・邇邇芸命(ににぎのみこと)の妃となった木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやびめのみこと)との結びつきを語る、薩摩・大隅地方の山岳信仰伝承である。木花之佐久夜毘売命は『古事記』上巻天孫降臨段に登場し、邇邇芸命の妃として三柱の御子を産み、火中出産の場面で炎と樹木に縁の深い神格として描かれる。後世の山岳信仰の枠組みでは、火を司る神格として活火山桜島の主神に位置づけられ、桜島の北東麓に鎮座する月読神社(つきよみじんじゃ)や、対岸の鹿児島神宮(霧島市)と並ぶ南九州の重要祭祀地として信仰された。
伝承は三段で構成される——(一)記紀における木花之佐久夜毘売命の登場と火中出産、(二)活火山桜島と火の神格との結合、(三)地域祭祀における信仰の継承。記紀の天孫系神話を、薩摩・大隅の活火山という具体的な自然現象に重ねる山岳信仰の典型例で、北の白山(菊理媛神)・富士山(同じく木花之佐久夜毘売命)と並ぶ「女神を祀る火の山」信仰圏の南端を担う。火山と桜という二つの「花」が、女神の名と火の神格を一つに結びつける物語的装置となる。
中心比定地は鹿児島県鹿児島市の桜島(御岳、標高 1,117 m)。桜島東部の月讀神社(つきよみじんじゃ、桜島横山町)は南九州を代表する月讀神祭祀地で、桜島噴火の鎮静を願う祭礼が伝承される。富士山(静岡県・山梨県)山頂の浅間大社奥宮、富士宮市の富士山本宮浅間大社、霧島山(鹿児島県・宮崎県)の霧島神宮も木花之佐久夜毘売命を主祭神とし、列島各地の活火山に女神を祀る信仰圏を成す。
『古事記』上巻 天孫降臨段・火中出産段(和銅五年・712 年)、『日本書紀』神代下 第九段一書(養老四年・720 年)。桜島と木花之佐久夜毘売命との結びつきに関しては、中世以降の社寺縁起、薩摩藩編纂の地誌『三国名勝図会』(天保十四年・1843 年成立)、近世修験道資料に展開が見える。月讀神社社伝、鹿児島県神社庁の資料、鹿児島市教育委員会の地域史料、桜島火山観測所の地史資料を参照する。
寺社縁起・社寺由緒資料 桜島木花開耶姫伝承
一次文献寺社縁起・社寺由緒資料 桜島木花開耶姫伝承に基づく桜島木花開耶姫伝承の代表的な典拠整理。
日本伝説大系
二次資料日本伝説大系などを参照した桜島木花開耶姫伝承の地域的受容と異伝の補助確認。
名称や説話、図像、儀礼に重なる具体モチーフです。