
伝承
山口県の大首伝承は山口県を主な舞台として整理する伝承。大首との関係を持ち、一覧や地図で出典、土地、怪異を結ぶ入口になる。
大首(おおくび)伝承は、山口県を含む西日本の夜空に出るとされる巨大な人首の怪異譚で、深夜の空に女の巨大な首が浮かび、雲を背にして家々を見下ろし、にやりと笑って消えていく、と伝えられる。鳥山石燕『今昔画図続百鬼』に「大首」として描かれ、お歯黒(はぐろ)を施した中世風の女首が雲の中から覗く構図で記される。長門(ながと)国(現・山口県)では、関ヶ原の戦い後の毛利氏移封の際の怨霊化、あるいは中世の戦乱で命を落とした女たちの怨念の集合体として語られた。京の以津真天(いつまで)と並ぶ「空の怪異」を成す。
物語は三段で構成される——(一)深夜の空への巨大首の出現、(二)家々への一瞥と笑み、(三)夜明けによる消失と翌日の災厄(疫病・火事)の予兆。「天上から見下ろす怪異」は京の以津真天(いつまで)、群馬の見越し入道(みこしにゅうどう)と機能的に対応する。大首は性別・身分の高さ(お歯黒)を持つ点で、近世女性の怨念を体現する文化的造形と読まれる。
中心となる伝承圏は山口県萩(はぎ)市・長門市・下関市の旧長州藩域、瀬戸内海側の周防(すおう)地方。萩城の旧城下、関門海峡沿岸、毛利氏ゆかりの寺社圏で語り継がれた。同じ中国地方の鳥取・島根の山陰側怪異群、広島の山本五郎左衛門(さんもとごろうざえもん)伝承と並ぶ中国地方の郷土妖怪を成す。
鳥山石燕『今昔画図続百鬼』(安永八年・1779 年)所収「大首」。山口県教育委員会編『山口県史 民俗編』、萩市史、下関市史。近世長州藩の地誌『防長風土注進案』『長門国風土記(後世補綴本)』にも空の怪異への類縁的言及がある。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
山口県の大首伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、地域の怪異伝承を整理する二次資料。