
妖怪
お歯黒べったりは、宮城県仙台市を入口にたどる怪異。顔や化粧の異様さで人を驚かす女性の怪異として語られる
お歯黒べったり(おはぐろべったり)は、顔に目鼻がなく、口だけがあって真っ黒にお歯黒を塗られた女の怪異。後ろ姿は普通の若い女性に見えるが、振り向くと顔面にお歯黒の口だけが大きく開いており、近寄った者を驚かす。近世の怪談・絵本に登場する女性怪異の代表格。
代表的な筋は、夜の神社の境内や暗い辻に佇む白い顔の女が、声を掛けると振り向き、顔面に目鼻がなく口だけが黒く笑う、というもの。江戸期の怪談集と明治期の絵本に類話が散見される。お歯黒は近世まで既婚女性の化粧の標識であり、その化粧だけが残った顔という像は、家庭・夫婦の崩壊や成仏できない女の念を主題とする近世怪異の典型を成す。
近世の絵本・怪談集に散見されるが、文献初出としては明治期以降の妖怪事典・絵本に整理される。竹原春泉斎画『絵本百物語』(桃山人著、1841 年)系列および後代の佐脇嵩之『百怪図巻』『化物尽絵巻』系統の絵巻群に類例の「のっぺらぼう」「のっぺり女」と並置される。村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005 年)に項目立てされ、国際日本文化研究センター「怪異・妖怪伝承データベース」に採録される。
顔のない女の怪異として「のっぺらぼう」「ずんべら坊」と近縁し、近世女性怪異群の中で互換的に語られる。京都・大阪では「のっぺらぼう」、関東では「のっぺり」、東北では「お歯黒べったり」と呼称が地域ごとに分かれる例もある。宮城県の固有地域譚としての具体的記録は限定的で、近世怪異絵巻系の女性怪異として整理される。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース お歯黒べったり
一次文献国際日本文化研究センター
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース お歯黒べったりに基づくお歯黒べったりの代表的な典拠整理。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
日本妖怪大事典などを参照したお歯黒べったりの地域的受容と類縁語の補助確認。
名称や説話、図像、儀礼に重なる具体モチーフです。