
日本神話
天津麻羅は、岩戸神話に位置づける神格。鍛冶に関わる神格として、天岩戸の祭具作りと技芸の文脈を補う
天津麻羅(あまつまら)は、『古事記』天石屋戸段に記される天津神。鍛冶(かぬち)の祖神として位置づけられ、天岩戸神話で八咫鏡(やたのかがみ)の鋳造に関わる技芸神。鍛冶部・金工技芸の祖神として古代の物部・忌部系氏族と結びつく神格である。
『古事記』上巻 天石屋戸段に「天の金山の鉄を取りて、鍛人 天津麻羅を求ぎて、伊斯許理度売命に科せて鏡を作らしめ」と記される。天照大御神が天岩戸に籠もって世界が暗闇に閉ざされた際、思金神(おもいかねのかみ)の発案で岩戸を開かせる祭具として八咫鏡を造らせる場面に登場する。鏡作りの女神 伊斯許理度売命(いしこりどめのみこと)と並んで、鉄を打ち鍛える担当神として記される。「鍛人」の語は鍛冶職人を指し、技芸神の典型的な性格を示す。
『古事記』に系譜は明記されないが、後世の系図類では天目一箇神(あめのまひとつのかみ)と同神視される説があり、片目の鍛冶神として全国の鍛冶氏族の祖神に位置づけられる。新撰姓氏録(弘仁六年・815 年)には鍛冶部の祖神として関連する記述が見え、忌部氏(いんべうじ)の祭祀圏との関わりも指摘される。
鍛冶神社(各地)に祀られる例があり、特に天目一箇神を祀る多度大社別宮 一目連神社(三重県桑名市)の伝承に連なる。古代の金属加工集団の信仰対象として、播磨国・近江国・伊勢国など金属精錬の盛んな地域に祭祀の痕跡が残る。天岩戸神話を共有する高千穂神社(宮崎県西臼杵郡)周辺の伝承にも、鍛冶神として天津麻羅の名が伝えられる。
天津麻羅 あまつまら
一次文献國學院大學 古典文化学事業「神名データベース」天津麻羅。
https://kojiki.kokugakuin.ac.jp/shinmei/amatsumara/古事記 上巻 天岩戸段
一次文献古事記 上巻 天岩戸段に基づく神格・系譜・登場場面の整理。
神道・神名辞典 天津麻羅項
二次資料神道・神名辞典 天津麻羅項を参照した神格名・関連文脈の補助確認。
名称や説話、図像、儀礼に重なる具体モチーフです。