
伝承
愛媛県の隠神刑部伝承は愛媛県を主な舞台として整理する伝承。隠神刑部との関係を持ち、一覧や地図で出典、土地、怪異を結ぶ入口になる。
隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)伝承は、愛媛県松山藩を舞台とする「松山騒動八百八狸物語(まつやまそうどうはっぴゃくやだぬきものがたり)」の中核を成す妖狸譚である。松山城下の久谷(くたに)の山中に棲む大狸・隠神刑部は、八百八匹の眷属狸を率いて霊力を振るい、松山藩のお家騒動に乗じて藩政を撹乱したとされる。家老・奥平久兵衛(おくだいらきゅうべえ)の陰謀に与して城内に化け込み、忠臣・稲生武太夫(いのうぶだゆう)の系譜を引く法力者によって調伏され、最終的に山中の岩窟に封じられた、と伝えられる。
物語は三段で構成される——(一)藩内の権力争いと隠神刑部の介入、(二)八百八狸による化け込みと撹乱、(三)法力者による調伏と岩窟封印。妖怪が藩政劇の登場人物として描かれる点が特徴で、佐渡の団三郎狸、徳島の屋島の禿狸と並ぶ「日本三大狸」の一角に数えられる。広島の「稲生物怪録(いのうもののけろく)」の主人公・稲生武太夫の系統と接続して語られる。
舞台は愛媛県松山市の久谷地区と松山城下。隠神刑部を祀る山口霊神(やまぐちれいじん)社が現在も松山市畑寺町に鎮座し、調伏された刑部狸の霊を祀る。徳島の屋島(やしま)禿狸、新潟佐渡の団三郎狸との交流譚も伝わる。
近世末期の講談・実録本『松山騒動八百八狸物語』(明治期に整版)、愛媛県教育委員会編『愛媛県史 民俗編』、松山市史。隠神刑部の名は近世実録『稲生物怪録』系の妖怪譚にも見える。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
愛媛県の隠神刑部伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、地域の怪異伝承を整理する二次資料。
名称や説話、図像、儀礼に重なる具体モチーフです。