
伝承
福島県の黒塚伝承は福島県を主な舞台として整理する伝承。黒塚との関係を持ち、一覧や地図で出典、土地、怪異を結ぶ入口になる。
黒塚(くろづか)伝承は、福島県二本松市の安達ヶ原(あだちがはら)に棲んだとされる鬼婆・岩手(いわて)の物語で、平兼盛(たいらのかねもり)の和歌「みちのくの安達原のくろづかに鬼こもれりと言ふはまことか」(『拾遺和歌集』巻第九)を起点に文学化された。鬼婆・岩手は、難病の主の娘の薬として妊婦の胎児の生肝を求めるうち、自らの娘と知らずに殺してしまい狂気に陥り、岩屋に籠もって旅人を襲うようになった、と『大和物語』『今昔物語集』などの説話に展開される。後に名僧・東光坊祐慶(とうこうぼうゆうけい)の念仏により調伏される筋で能『黒塚(安達ヶ原)』の主題となった。
物語は三段で構成される——(一)親子の悲劇と狂気への転落、(二)安達ヶ原の岩屋での旅人襲撃、(三)祐慶の法力による調伏。母娘の悲劇を内包する鬼譚という点で、他の山姥譚(やまんばたん)と区別され、人間の苦悩が怪異化する近世以降の「鬼譚の心理化」の典型として読まれる。
比定地は福島県二本松市安達ヶ原。安達ヶ原ふるさと村に伝承の岩屋「黒塚」が現存し、観世寺(かんぜじ)が鬼婆・岩手を弔う寺として知られる。陸奥(みちのく)の歌枕として古来詠まれ続けた歌枕の地でもある。
平兼盛『拾遺和歌集』巻九 雑下(寛弘三年・1006 年頃成立)所収の和歌、『大和物語』第五十八段、『今昔物語集』巻二十七、能『黒塚(安達ヶ原)』(観世流。世阿弥の養子・観世元雅の作とも)。歌舞伎『奥州安達原』、福島県教育委員会編『福島県史 民俗編』。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
福島県の黒塚伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、地域の怪異伝承を整理する二次資料。