
伝承
岐阜県の両面宿儺伝承は岐阜県を主な舞台として整理する伝承。両面宿儺との関係を持ち、一覧や地図で出典、土地、怪異を結ぶ入口になる。
両面宿儺(りょうめんすくな)伝承は、岐阜県飛騨地方を中心に伝わる古代の異形伝承で、『日本書紀』仁徳天皇六十五年条に記される、飛騨国に出現した「身一にして両面有り、面各相背けり」と描写される怪人の物語である。書紀では、両面宿儺は皇命に従わず、人々を略奪する賊として武振熊命(たけふるくまのみこと)に討たれた朝廷の敵と記される。一方、飛騨地方の地誌・寺伝では、両面宿儺は飛騨を治めた賢者・救世者として描かれ、千光寺(せんこうじ)開山、丹生川(にゅうかわ)の鍾乳洞封印など、地域の守護神格として崇敬される。
物語は二重構造を持つ——(一)中央史書の「化外(けがい)の賊」としての両面宿儺、(二)飛騨地方伝承の「開拓神・救世者」としての両面宿儺。中央と地方の語りの分裂は、ヤマト王権による飛騨支配の歴史的記憶を反映するとされ、日本神話における「化外の蛮族」と「土着の祖神」の二重性を示す代表例として議論されてきた。
中心となる伝承地は岐阜県高山市丹生川町の千光寺、関市の日龍峯寺(にちりゅうぶじ)、下呂市金山町の岩屋岩蔭遺跡。千光寺には両面宿儺像(伝・円空作)が伝わり、飛騨一国の祖神として今も供養される。武振熊命の墓所伝承地(岐阜県美濃地方)と地理的に対をなす。
『日本書紀』巻第十一 仁徳紀六十五年条(養老四年・720 年成立)。飛騨千光寺寺伝、『飛州志』『斐太後風土記』など近世飛騨地誌、岐阜県教育委員会編『岐阜県史 民俗編』。円空(えんくう)の両面宿儺像は岐阜県重要文化財に指定。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
岐阜県の両面宿儺伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、地域の怪異伝承を整理する二次資料。