
伝承
群馬県の茂林寺釜伝承は群馬県を主な舞台として整理する伝承。茂林寺釜との関係を持ち、一覧や地図で出典、土地、怪異を結ぶ入口になる。
茂林寺釜(もりんじがま)伝承は、群馬県館林市の茂林寺に伝わる「分福茶釜(ぶんぶくちゃがま)」物語の本縁起である。茂林寺七世住職の守鶴(しゅかく)和尚は、千年も尽きることのない不思議な茶釜を持っており、寺で大法要が行われた際には何千人もの参列者に茶を振る舞っても湯が湧き続けた、と伝えられる。守鶴は実は数千年を生きた狢(むじな)あるいは古狸(ふるだぬき)の化身で、寺に長く仕えたが、ある日昼寝の最中に獣の姿を露わにし、寺と弟子たちに別れを告げて去ったとされる。茶釜は今も茂林寺に伝来し、寺宝として現存する。
物語は三段で展開する——(一)守鶴和尚と尽きぬ茶釜の出会い、(二)大法要での湯の奇瑞、(三)正体露見と茶釜の遺贈。後世の「分福茶釜」昔話は、茶釜が狸そのものに変じる「化け茶釜」型に変奏され、児童文学の代表的演目となった。新潟佐渡の団三郎狸、四国屋島の禿狸と並ぶ「動物霊と寺院」型縁起の代表例。
比定地は群馬県館林市堀工町の茂林寺(曹洞宗)。応永三十三年(1426 年)に大林正通(だいりんしょうつう)が開山した寺で、境内には茶釜と狸像が並び、本堂裏に伝承の茶釜が「分福茶釜」として伝来する。境内入口には二十一体の狸像が並び、参拝者を迎える。
茂林寺寺伝『分福茶釜略縁起』(江戸期成立)、群馬県教育委員会編『群馬県史 民俗編』、館林市史。江戸期の随筆『煙霞綺談(えんかきだん)』にも守鶴と茶釜の譚が引かれる。明治期に巖谷小波(いわやさざなみ)が『日本昔噺』で児童向けに再話して全国に広まった。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
群馬県の茂林寺釜伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、地域の怪異伝承を整理する二次資料。