
伝承
広島県の山本五郎左衛門伝承は広島県を主な舞台として整理する伝承。山本五郎左衛門との関係を持ち、一覧や地図で出典、土地、怪異を結ぶ入口になる。
山本五郎左衛門(さんもとごろうざえもん)伝承は、広島県三次(みよし)市を舞台とする近世実録『稲生物怪録(いのうもののけろく)』の中核を成す妖怪首領譚である。寛延二年(1749 年)、三次藩士・稲生武太夫(いのうぶだゆう)が肝試しに比熊山(ひぐまやま)の比叡尾山(ひえびやま)に登った後、屋敷に三十日連続で異形の怪が現れた。最終夜に正体を現したのが山本五郎左衛門で、自身は妖怪魔王の二大頭領の一方であり、もう一方の頭領・神野悪五郎(しんのあくごろう)との「人間を恐れさせる勝負」のために武太夫を試したのだ、と告げ、退散の証として木槌を残して去ったとされる。
物語は三段で構成される——(一)肝試しと異変の発端、(二)三十日にわたる連夜の怪異の押し寄せ、(三)妖怪魔王の正体露見と勝負の終結。「妖怪と人間の勝負」を物語の枠組みに据える点が画期的で、後世の妖怪コンテンツ史に決定的な影響を与えた。神野悪五郎との対の構造は、京の以津真天(いつまで)や近江の輪入道などとは異なる「妖怪統治論」を体現する。
舞台は広島県三次市三次町の比熊山と稲生武太夫の屋敷跡。三次もののけミュージアム(湯本豪一記念日本妖怪博物館、2019 年開館)に絵巻『稲生物怪録絵巻』が常設展示され、現代の妖怪文化発信の拠点となっている。妖怪魔王のもう一方・神野悪五郎の伝承地は不詳ながら、対の概念で語られ続ける。
柏正甫(かしわまさすけ)筆『稲生物怪録』(寛延三年・1750 年頃成立)。『稲生物怪録絵巻』(複数本伝来)、平田篤胤(ひらたあつたね)『稲生物怪録』再話本(江戸後期)。広島県教育委員会編『広島県史 民俗編』、三次市史。湯本豪一『日本妖怪博物館の世界』に画像資料の整理がある。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
広島県の山本五郎左衛門伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、地域の怪異伝承を整理する二次資料。