
伝承
北海道のコロポックル伝承は北海道を主な舞台として整理する伝承。コロポックルとの関係を持ち、一覧や地図で出典、土地、怪異を結ぶ入口になる。
コロポックル(アイヌ語で「蕗(ふき)の葉の下の人」を意味する koro-pok-kur)伝承は、北海道のアイヌ口承文芸に伝わる小人族の物語である。コロポックルは大きな蕗の葉の下に住むほどの小柄な種族で、アイヌが北海道に渡る以前から島に住んでいた先住者とされる。当初はアイヌと交易して魚や獣肉と土器を交換していたが、ある夜、コロポックルの女が窓から差し入れの腕だけを見せたところ、アイヌの若者が腕を掴んで引き入れ、女の姿を見てしまった。羞恥と怒りからコロポックルは「アイヌに呪いを残して」北の海へ去り、二度と戻らなかった、と伝えられる。
物語は三段で展開する——(一)コロポックルとアイヌの交易と共生、(二)禁忌の侵犯(姿を見ること)、(三)コロポックルの北方への去就と決別。「見るな」型禁忌譚として日本本土の「鶴の恩返し」「見るなの座敷」と構造的に対応し、先住・後住の文化的境界の物語として読まれる。土器文化人=コロポックル説(小金井良精)など、考古学・人類学の論争史でも重要な位置を占めた。
伝承圏は北海道全域、特にコロポックル住居跡と伝えられる石組み遺構が点在する道南・道東地方。網走の能取湖周辺、十勝・釧路の海岸段丘、利尻・礼文の島嶼部に小人住居譚が伝わる。アイヌ民族博物館(北海道白老町ウポポイ)にも関連資料が展示される。
知里真志保(ちりましほ)『アイヌ民譚集』、金田一京助(きんだいちきょうすけ)『アイヌ叙事詩 ユーカラ集』、知里幸恵(ちりゆきえ)『アイヌ神謡集』。坪井正五郎(つぼいしょうごろう)『コロボックル風俗考』(明治期)を起点とする論争史も古典資料として参照される。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
北海道のコロポックル伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、地域の怪異伝承を整理する二次資料。