
伝承
北海道のオッケルイペ伝承は北海道を主な舞台として整理する伝承。オッケルイペとの関係を持ち、一覧や地図で出典、土地、怪異を結ぶ入口になる。
オッケルイペ伝承は、北海道のアイヌ口承文芸に伝わる屁(へ)の怪異譚で、オッケルイペ(アイヌ語で「屁を放つ者/屁の音」の意とされる)は、夜陰に紛れて家屋(チセ)の周囲に現れ、轟音とともに屁を放って人を驚かせる怪異とされる。コロポックルや化け熊(イオマンテの対象たる熊神とは別)の小人化した変種、あるいはそれと類縁する精霊として語られ、悪意は薄く、いたずら好きの境界霊の一種と位置づけられる。アイヌ口承における音と笑いの怪異群の中で、ニッネカムイ(悪神)とは別系統の道化的存在として記録される。
物語は三段で組み立てられる——(一)夜更けの家の周りでの怪音の発生、(二)住人の畏怖と神への祈り、(三)夜明けによる消失と笑い話への変換。アイヌのカムイユカラ(神謡)には人間と神の境界を笑いで媒介する存在が散見され、オッケルイペはその系譜の一翼として伝わる。コロポックルが「先住の小人」、オッケルイペが「境界の道化」と対比的に語られることもある。
中心となる伝承圏は北海道日高地方・胆振地方のアイヌ集落(コタン)と、十勝・釧路の口承伝承圏。集落周辺の森(ニタイ)と海岸が出没地とされ、家屋に隣接する境界に出る点で、本土の「家鳴り」「天井下り」と機能的に対応する。
知里真志保『アイヌ民譚集』『アイヌ語入門』、知里幸恵『アイヌ神謡集』(大正十二年・1923 年)、金田一京助『アイヌ叙事詩 ユーカラ集』。北海道立アイヌ民族文化研究センター(札幌)の口承記録、北海道大学アイヌ・先住民研究センター所蔵の現地調査資料に類話が収録される。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
北海道のオッケルイペ伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、地域の怪異伝承を整理する二次資料。