
伝承
一寸法師は、典拠と代表地点を確認した公開項目として整理する伝承。御伽草子の小さな若者の旅と住吉周辺の伝承文脈をたどるための入口になる。
一寸法師(いっすんぼうし)は、住吉明神(すみよしみょうじん)への祈願によって授かった一寸(約 3 cm)の体しか持たない男児が、都に出て鬼を退治し、宰相の婿となって身を立てる御伽草子の物語である。摂津国難波の里に住む老夫婦が、子を授かるよう住吉大社(すみよしたいしゃ)に詣でて祈ったところ、小さな男児を授かる。十二歳になっても背丈が変わらない一寸法師は、お椀の舟・箸の櫂・針の太刀を装備して京の都へ上り、宰相・三条殿の屋敷で召し抱えられる。姫君のお供で清水寺参詣の途上、鬼に襲われた折、一寸法師は鬼に呑み込まれるが腹中で針の太刀を振るって暴れ、降参した鬼は打出の小槌(うちでのこづち)を残して逃げる。小槌を振ると一寸法師は立派な体に成長し、姫君と結婚して栄達を遂げる。
物語は四段で構成される——(一)住吉明神の霊験による異常出生、(二)小さな体での旅立ちと都での仕官、(三)鬼との対決と打出の小槌の獲得、(四)変身と婚姻による社会的成就。日本における小さ子(ちいさご)譚の典型例で、サイズの異常性が物語の駆動力となる。住吉明神の信仰(航海・和歌・農耕の神)が異常出生と都への昇進譚に結びつく点に、御伽草子期の信仰風景が反映される。打出の小槌は宝物譚モチーフの代表で、後世の七福神信仰にも継承される。
比定地は大阪府大阪市住吉区の住吉大社(祈願地)、難波(出生地)、京都の三条大橋・清水寺周辺(仕官と鬼退治の舞台)。住吉大社境内の種貸社(たねかしのやしろ)は子授け祈願の社で、現在も一寸法師伝承と結びつけて参拝されている。大阪市と京都市を結ぶ淀川・大和川の水路は、一寸法師が椀の舟で上京した経路として現代まで地域記憶を残す。
室町期成立の御伽草子『一寸法師』(『御伽草子』所収。寛文六年・1666 年刊『御伽文庫』に収録)が伝承の中核。江戸期には赤本・絵入本で広く流布し、明治期には巖谷小波『日本昔噺』、楠山正雄『一寸法師』(青空文庫所収)が再話を行った。関敬吾『日本昔話大成』に「小さ子譚」分類項目で整理される。住吉大社社伝、大阪市住吉区の地域資料も二次史料となる。
御伽草子 一寸法師
一次文献御伽草子 一寸法師に見える一寸法師の代表的な典拠。
御伽草子
一次文献一寸法師の本文、章節、代表的な筋を確認する一次文献・伝承本文。
日本昔話大成
二次資料日本昔話大成など、一寸法師の伝承差や地域的受容を整理する二次資料。
一寸法師 伝承差整理資料
二次資料一寸法師の地域差、受容、代表地点を整理するための二次資料。