
伝承
神奈川県の舞首伝承は神奈川県を主な舞台として整理する伝承。舞首との関係を持ち、一覧や地図で出典、土地、怪異を結ぶ入口になる。
舞首(まいくび)伝承は、神奈川県真鶴(まなづる)沖の相模灘(さがみなだ)に伝わる戦国期の怪異譚で、内輪揉めから刃傷沙汰となり斬首された三人の侍の首が海に投げ込まれた後、互いに憎悪を燃やしながら海上で延々と舞い続けたと伝えられる物語である。竹原春泉(たけはらしゅんせん)画・桃山人作『絵本百物語』巻第四に「舞首」として描かれ、燃え盛る三つの首が水面で互いを噛み合う凄絶な構図で知られる。鎌倉幕府の御家人同士の私闘の記憶に由来するとも、近世初期の漁村喧嘩譚の妖怪化とも語られる。
物語は三段で構成される——(一)三侍の口論と斬り合いの果ての相討ち、(二)海への首の投棄、(三)海上での首の永遠の舞と憎悪の継続。怨念が肉体を離れても消えないという中世以来の怨霊観(御霊(ごりょう)信仰の暗黒面)が、海という閉じない場で象徴化される。相模湾の海怪譚として、伊豆の海坊主、湘南の海女霊との文脈を共有する。
比定地は神奈川県足柄下郡真鶴町沖の相模灘。真鶴半島先端の三ツ石(三ツ岩、潮の干満で姿を変える奇岩)が舞首の三首に重ねられて語られる。源頼朝(みなもとのよりとも)の真鶴上陸地(石橋山合戦後)の伝承地と地理的に近接し、武家政権黎明期の怨念譚の系譜にも接続する。
桃山人作・竹原春泉画『絵本百物語(桃山人夜話)』天保十二年(1841 年)刊 所収「舞首」。神奈川県教育委員会編『神奈川県史 民俗編』、真鶴町史。鳥山石燕系の妖怪画集にも類似の海怪が登場するが、舞首の名は『絵本百物語』に固有。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
神奈川県の舞首伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、地域の怪異伝承を整理する二次資料。