
伝承
長野県の飯綱伝承は、飯縄信仰や狐使いの語彙と重なる語り。狐 motif、土地、出典を分けて辿れる。
長野県の飯綱(いづな)伝承は、北信濃 飯綱山(いいづなさん、現在の長野県長野市・上水内郡)を本山とする飯綱信仰と、そこから派生した狐使い・管狐(くだぎつね)の語りが交差する伝承群である。飯綱山に山伏が籠もって修行し、烏天狗の姿で描かれる飯綱権現(いづなごんげん)の加護を受けて飯綱法(いづなほう)と呼ばれる呪術を会得した、と伝えられる。飯綱法を修めた者は管狐を使役し、他人を憑かせる、あるいは戦場で勝利を得るとされ、戦国期には武将の信仰を集めた。一方で在地の民俗伝承では、飯綱を使う者は「クダ持ち」と同じく忌避の対象となり、修験の正統と民間の憑き物観念の双方を内包する複合伝承として伝えられてきた。
物語の構造は三層で成る——(一)飯綱権現(烏天狗形)の本地と垂迹、(二)山伏による飯綱法の修得と眷属としての管狐使役、(三)武家信仰(上杉謙信・武田信玄等が信仰したと伝えられる)と在地の憑き物伝承の対立的併存。修験道の権威と民間の畏怖が一つの山の周りに重なる点に、信仰史的な厚みがある。
中心となる伝承地は飯綱山と山麓の戸隠村・芋井村(現・長野市内)、そして長野市皆神山の皆神神社、戸隠神社(長野市戸隠)の周辺。江戸期には全国に飯綱信仰の講が広がり、東京都八王子市の高尾山薬王院や高尾山有喜寺の飯綱信仰、福島県相馬郡の飯綱社など、関東・東北にも分布が見える。
飯綱信仰の文献としては『飯綱大権現秘伝』『飯綱使秘伝書』など江戸期の修験書が伝来する。柳田國男『山島民譚集』(1914 年)、宮田登『神の民俗誌』(1979 年)、村山修一『山伏の歴史』(1970 年)に飯綱信仰の歴史的展開が論じられる。長野県教育委員会編『長野県史 民俗編』にも飯綱講と憑き物の事例が記録される。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
長野県の飯綱伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベースを、nagano-izuna-legend の detail source-readiness pass の一次資料として参照。
日本妖怪大事典
村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、地域の怪異伝承を整理する二次資料。
日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
日本妖怪大事典を、名称・地域差・類縁語を確認する二次資料として参照。
名称や説話、図像、儀礼に重なる具体モチーフです。