
伝承
奈良県のがごぜ伝承は奈良県を主な舞台として整理する伝承。がごぜとの関係を持ち、一覧や地図で出典、土地、怪異を結ぶ入口になる。
がごぜ(元興寺、がんごう)伝承は、奈良市の元興寺(がんごうじ)に伝わる平安初期の鬼退治譚で、『日本霊異記(にほんりょういき)』中巻・第三十五縁に記される説話に基づく。元興寺の童子(後の道場法師、どうじょうほうし)は怪力の少年で、寺の鐘楼に夜ごと現れて若い僧をさらう鬼に挑み、夜明けまで格闘して鬼を寺の外まで引きずり出し、鬼は逃げ去る際に頭髪を残して消えた、と伝えられる。「がごぜ」は元興寺(がんごうじ)の訛りで、子を怖がらせる「がご」「がんごう」の語源にもなったとされる。鳥山石燕『画図百鬼夜行』にも「元興寺」として描かれる代表的な寺院鬼譚。
物語は三段で展開する——(一)夜の鐘楼での僧の連続失踪、(二)童子(道場法師)による鬼との格闘、(三)夜明けによる鬼の退散と毛髪の遺留。少年の怪力という肉体的な英雄譚と、夜明けによる鬼の退散という時間的境界を組み合わせる典型構造で、京の渡辺綱(わたなべのつな)の鬼退治譚(一条戻橋・羅生門)と並ぶ平安期鬼退治譚の双璧を成す。
比定地は奈良県奈良市中院町の元興寺(旧称・法興寺、飛鳥寺の系譜を引く平城京の大寺)。世界文化遺産「古都奈良の文化財」の構成資産で、極楽坊(ごくらくぼう)と称される禅室・本堂は国宝に指定される。境内には道場法師にちなむ伝承地が残り、奈良町の信仰核として続く。
景戒(けいかい)撰『日本国現報善悪霊異記(日本霊異記)』中巻 第三十五縁(弘仁年間・810〜823 年成立)。鳥山石燕『画図百鬼夜行』(安永五年・1776 年)所収「元興寺」。奈良県教育委員会編『奈良県史』、元興寺寺伝『元興寺縁起』。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
奈良県のがごぜ伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、地域の怪異伝承を整理する二次資料。