
伝承
滋賀県の油赤子伝承は滋賀県を主な舞台として整理する伝承。油赤子との関係を持ち、一覧や地図で出典、土地、怪異を結ぶ入口になる。
油赤子(あぶらあかご)伝承は、滋賀県大津市八田の油盗人(あぶらぬすびと)譚に由来する妖怪譚で、近江国大津の八町通り(はっちょうどおり)の油屋の主人が死後、油を盗んだ罪の報いで火の玉となり、夜ごと近隣の家の行灯(あんどん)の油を舐めに現れる、と伝えられる。やがて火の玉は赤子(あかご)の姿に変じて空中に浮かび、行灯の油を吸い続けたと語られる。鳥山石燕『今昔画図続百鬼』に「油赤子」として収められ、油壺を持つ裸の赤子が宙に浮く構図で描かれる。近江の灯明油盗人譚の代表例で、京の輪入道(わにゅうどう)と並ぶ近畿の業の妖怪を成す。
物語は三段で組み立てられる——(一)油屋の主人による生前の油盗み、(二)死後の火の玉化と行灯巡り、(三)赤子姿への変化と油吸いの継続。因果応報を造形化した「業の妖怪」の典型で、石川県能登の塩の長司(しおのちょうじ)、京の以津真天(いつまで)と並ぶ石燕画集の業系妖怪群に属する。近世仏教の地獄観と都市民俗の境界に位置する。
比定地は滋賀県大津市の旧八町通り(現・中央通り近辺)、近江国の油市場の中心地。比叡山延暦寺の門前町として近世に栄え、灯明用油の需要が高かった地域で、油盗人譚が集積した文化圏に位置する。京の伏見・山科の灯明文化圏とも連続し、近畿の灯明油民俗の代表的伝承地。
鳥山石燕『今昔画図続百鬼』(安永八年・1779 年)所収「油赤子」。滋賀県教育委員会編『滋賀県史 民俗編』、大津市史。近世近江の地誌『近江輿地志略』『淡海録(たんかいろく)』にも油盗人譚への言及がある。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
滋賀県の油赤子伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、地域の怪異伝承を整理する二次資料。