
伝承
舌切り雀は群馬県安中市を代表地点として整理する伝承。雀への扱いをめぐり、贈与と欲の対比を示す昔話として語られ、出典、土地、関連エンティティを分けてたどれる。
舌切り雀(したきりすずめ)は、雀(すずめ)を可愛がる優しい老爺と、欲深な老婆の対比を通じて、慈愛と強欲の応報を語る昔話である。老爺が大事に飼っていた雀が、留守中に老婆の糊を舐めてしまい、怒った老婆が雀の舌を鋏で切って追い出す。雀を案じた老爺は山に分け入って雀のお宿を訪ね、再会した雀たちに歓待される。帰り際、老爺は「大きな葛籠(つづら)と小さな葛籠、どちらを選ぶか」と問われ、小さい方を選んで持ち帰ると、中から金銀財宝が現れる。それを聞いた老婆は自分も山へ行き、大きな葛籠を選ぶ。家に着いて開けると、中からは蛇・百足(むかで)・蜂などの恐ろしいものが現れて老婆を襲う。
物語は四段で構成される——(一)動物への小さな慈愛と暴力的な仕打ち、(二)異界(雀のお宿)への訪問、(三)謙虚な選択と贈与の獲得、(四)強欲な選択と懲罰。「隣の爺型」昔話の代表例で、「花咲か爺」「こぶとり爺さん」と同系列の対照構造を持つ。葛籠の大小と内容物の落差という単純な選択装置が、慈愛と強欲の倫理を一瞬で可視化する。動物——雀——との交流が、家屋から山中の異界への移動を必然化する点に、贈与譚の構造的特徴がある。
全国に類話が分布し、特定の一地点に比定されない。群馬県安中市磯部温泉(いそべおんせん)近郊には「舌切り雀発祥地」と称する伝承地と「舌切り雀のお宿」碑があり、磯部観光協会が地域資源として継承する。長野県中野市の小内八幡神社、滋賀県・京都府などにも関連伝承が散在する。
室町期成立の御伽草子『雀の発心』、江戸期の赤本・絵入本に「舌切り雀」題で繰り返し刊行された。明治期には楠山正雄『舌切雀』(青空文庫所収)、巖谷小波『日本昔噺』が再話を行い、関敬吾『日本昔話大成』第 6 巻「動物昔話・隣の爺型」分類項目に「舌切雀」型として整理される。文部省『尋常小学読本』にも採録され、近代国民教育を通じて全国化した。
日本昔話資料 舌切り雀
一次文献日本昔話資料 舌切り雀に見える舌切り雀の代表的な典拠。
日本昔話大成
二次資料日本昔話大成など、舌切り雀の伝承差や地域的受容を整理する二次資料。
あなたの縁
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