
伝承
東京都の送り拍子木伝承は東京都を主な舞台として整理する伝承。送り拍子木との関係を持ち、一覧や地図で出典、土地、怪異を結ぶ入口になる。
送り拍子木(おくりひょうしぎ)伝承は、東京都を含む江戸近郊の夜回り(夜警)にまつわる音響怪異譚で、深夜の路地を一人で歩いていると、誰もいないのに「カン、カン」と拍子木の音が背後から付いてくる、と伝えられる。振り返っても姿はなく、急いで家に駆け込むと音は止む。江戸の自身番(じしんばん、町の夜警所)の拍子木が、辻番が亡くなった後にも夜回りを続ける怪異として、本所七不思議や江戸の都市怪談の系譜に位置づけられる。送り犬・送り狼の音響変種として、関東の郷土妖怪文化の典型を成す。
物語は三段で構成される——(一)夜更けの一人歩きでの背後の拍子木音、(二)振り向き禁忌の作法、(三)家への到達による音の停止。「振り向くな」型禁忌は信州の送り犬(おくりいぬ)、土佐の夜雀(よすずめ)と共通する作法で、夜の境界における通過儀礼の物語化として読まれる。江戸の本所七不思議のおいてけ堀、足洗邸、置行堀(おいてけぼり)と並ぶ江戸の音響怪異圏に属する。
中心となる伝承圏は東京都墨田区本所・両国、台東区浅草、文京区根津・千駄木の旧江戸下町地区。近世の自身番が密集した町境の路地で語られた音響怪異で、現在の東京メトロ各駅周辺の旧町割りに伝承が残る。本所七不思議の足洗邸、おいてけ堀と並ぶ江戸下町の代表的怪異の一つ。
馬場文耕『近世江都著聞集』、岡本綺堂『半七捕物帳』に類話、東京都墨田区誌、台東区史。柳田國男『妖怪談義』、近世江戸の地誌『江戸名所図会』『絵本江戸土産』『本所七不思議図絵』にも送り拍子木の言及がある。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
東京都の送り拍子木伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、地域の怪異伝承を整理する二次資料。