
伝承
マヨイガは、典拠と代表地点を確認した公開項目として整理する伝承。遠野物語の山中で迷い込む家の語りを、贈与と禁忌に分けてたどるための入口になる。
マヨイガは、岩手県遠野地方に伝わる、山中で迷い込む不思議な家の伝承である。柳田國男『遠野物語』第 63 話によれば、村の女が山菜採りに山へ入り、見知らぬ立派な家にたどり着く。庭には鶏が遊び、座敷には膳が並び火鉢に炭がおこっていながら人の気配がない。女は恐ろしくなって何も持たずに帰る。後日、家筋の者が同じ山に入って椀(わん)を一つ持ち帰り、川辺で米を量る器に使ったところ、その米は尽きることなく増え続け、家は栄えるに至ったと記される。マヨイガは見つけた者に贈り物をするが、強欲に振る舞えば富は消えるとされる。
物語は三段で構成される——(一)山中で家にたどり着く「境界の越境」、(二)禁忌(家のものを持ち帰る/持ち帰らない)の選択、(三)贈与の結果としての家の盛衰。山中異界・贈与・禁忌の三層が結ばれる典型的な山人譚で、佐々木喜善が遠野で採集した古層の伝承の一つである。マヨイガを「山の精霊が与える贈り物」として、生活の偶然と恵みを物語化する民俗観念の中核に位置する。同型の話は東北各地で「山姥の家」「山中の家」として伝承される。
中心比定地は岩手県遠野市土淵町、栗橋町、宮守町を含む遠野盆地周縁の山地帯。具体の家屋は特定されないが、佐々木喜善の生家がある山口集落周辺の山中が物語の発生圏とされる。遠野市立博物館・伝承園の常設展示および柳田國男記念館(兵庫県福崎町)に関連資料が整理・公開される。
柳田國男『遠野物語』第 63 話(明治四十三年・1910 年自費出版)が中央への初出。佐々木喜善『遠野物語拾遺』にも関連譚が追補される。柳田國男『山の人生』(大正十五年・1926 年)、遠野市教育委員会刊行の地域民俗資料、岩手県立博物館の調査報告を主要史料とする。近年は近代児童文学・アニメーション作品の題材としても再生産が続く。
遠野物語
一次文献遠野物語に見えるマヨイガの代表的な典拠。
遠野物語
一次文献マヨイガの本文、章節、代表的な筋を確認する一次文献・伝承本文。
日本民俗学大系
二次資料日本民俗学大系など、マヨイガの伝承差や地域的受容を整理する二次資料。
マヨイガ 伝承差整理資料
マヨイガの地域差、受容、代表地点を整理するための二次資料。