
妖怪
寒戸の婆は岩手県を主な手がかりとして整理する怪異。山里で人を驚かす老女の怪異として語られ、対応する伝承と地図上の土地へつながる。
寒戸の婆(さむとのばば)は、岩手県遠野市松崎町に伝わる神隠し譚に登場する老女。若い娘の頃に梨の木の下から消え、長い年月の後に風の強い日にだけ家族のもとへ戻ってくるとされる。柳田國男『遠野物語』第八話に短く記され、神隠しと再来訪のモチーフを集約する代表的事例として知られる。
代表的な伝承では、寒戸村のある家の娘が嫁入り直前に行方を絶ち、三十年以上後、風の荒れる夜に老婆として戻り、家人と少し言葉を交わして再び姿を消すという筋を持つ。以後、その家では風の強い日になると「今日は寒戸の婆が来そうな日だ」と語られたとされ、神隠しの記憶が日常の天候と結びつく型で残る。
柳田國男『遠野物語』(明治四十三年、1910 年)第八話が文献初出として最も有名である。佐々木喜善の遠野口承を柳田が筆録した経緯が知られ、後の遠野民俗誌、村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005 年)、国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースに継承される。
遠野盆地には神隠しと再来訪の類話が複数残り、「寒戸の婆」の名のみが固有化した。東北各地の山の神・山姥伝承とも近接するが、寒戸の婆は名前と地名、風という条件の組み合わせで識別される。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
寒戸の婆に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、各地の妖怪名と伝承を整理する二次資料。
寒戸の婆 - Wikipedia 日本語版
二次資料Wikipedia contributors
柳田國男『遠野物語』第八話に記される寒戸の婆(神隠しから戻った老婆)に関する二次整理。岩手県遠野市松崎の伝承地と本文異同を扱う。