
音の怪異
うわんは、岩手県遠野市を入口にたどる怪異。古家や夜道で突然の声として語られる
うわん(ウワン)は、古寺・廃屋・夜道で突然「うわん」と大声を発して人を驚かす音の怪異。声を出すだけで姿は見せない、あるいは見えない透明な存在として語られる。鳥山石燕の図像集に由来する音の怪異の代表格。
鳥山石燕『画図百鬼夜行』陰の巻(1776 年)に「うわん」として図示され、古屋敷の戸口で口を大きく開けて叫ぶ姿が描かれる。賛文には、古き屋の戸口で人を驚かす者という由来が簡潔に示される。代表的な筋は、夜の古寺や廃屋を通る者に対し、突然「うわん」と大声を発する、それに対して「うわん」と返さないと魂を取られるといった応答譚として後代に派生した。
鳥山石燕『画図百鬼夜行』陰の巻(1776 年)が文献初出として広く知られる。近代以降は柳田國男『遠野物語拾遺』ほかの東北民俗資料に音の怪異・声の怪異の事例が採録され、岩手県遠野市・上閉伊郡の夜の山道で「うわん」と聞こえるという類話が報告される。村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005 年)に整理され、国際日本文化研究センター「怪異・妖怪伝承データベース」にも採録される。
音だけの怪異として「家鳴(やなり)」「叫び声の怪」「夜鳴き婆」と近縁する。応答譚という主題では、東北の「ノブスマ」「ヤマビコ」など山中の応答怪異群と系譜を共有する。岩手県遠野の伝承では古家の戸口での「うわん」が代表だが、岡山・四国にも「うわん」と呼ばれる類話があり、近世の図像が地域伝承を整理する形で各地に派生した。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース うわん
一次文献国際日本文化研究センター
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース うわんに基づくうわんの代表的な典拠整理。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
日本妖怪大事典などを参照したうわんの地域的受容と類縁語の補助確認。
名称や説話、図像、儀礼に重なる具体モチーフです。