
海の怪異
影鰐は島根県を主な手がかりとして整理する怪異。海に潜む鮫や怪魚として語られる怪異として語られ、対応する伝承と地図上の土地へつながる。
影鰐(かげわに)は、海に潜む鮫(さめ、古語ワニ)あるいは怪魚として伝えられる怪異。日本海沿岸・島根県の沿岸部を中心に類話が伝えられたと伝えられ、海中の影として船や岸に影響を及ぼす存在として語られる。「ワニ」は古語で鮫を指す語であり、神話の「因幡の素菟」に登場する和邇(ワニ)と同源の語彙である。
典型的な筋は、月夜の海面に大きな鮫の影が映る、海面に直接姿は見えないのに水底に巨大な影だけが動く、というもの。出雲・石見の漁師伝承では、影鰐が現れた夜は不漁になる、あるいは船底を擦って通り過ぎるという話型が語られる。古代神話の和邇譚と地続きの海怪異として、出雲・隠岐の磯辺信仰の中に位置を占めたと伝えられる。
『古事記』上巻 因幡の素菟段、『日本書紀』神代下 海幸彦山幸彦段に「和邇(ワニ)」として登場する鮫が、出雲・伯耆・隠岐の沿岸伝承の古層にあたる。柳田國男『海上の道』(1961 年)、島根県の郷土誌、村上健司編著『日本妖怪大事典』(2005 年)、国際日本文化研究センター「怪異・妖怪伝承データベース」に類話が収録される。
近縁怪異として「海坊主」「磯撫(いそなで)」「鮫人(こうじん)」と海上怪異の主題を共有する。古語「ワニ」が中世以降に「鮫」と分化していく過程で、影鰐は「目に見える鮫」と「見えない海の威」を結ぶ怪異として再構成されたと伝えられる。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
影鰐に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、各地の妖怪名と伝承を整理する二次資料。