
空の怪異
天づるしは山梨県を主な手がかりとして整理する怪異。空から吊るされるように現れる怪異として語られ、対応する伝承と地図上の土地へつながる。
天づるし(てんづるし)は、空から吊るされるように現れる怪異として山梨県を中心に伝えられる存在。樹上や軒先に何かが吊り下げられている異変、あるいは人影が宙吊りで見える、という形で語られたと伝えられる。空中・上方からの異変を視覚化する怪異圏に位置する。
典型的な筋は、夜の庭・峠・古寺の境内で、人や袋のような物が高い枝に吊り下げられた異様を目にする、というもの。風もないのに揺れる、近づくと消える、見た者は数日不調になる、という話型が伝えられる。甲府盆地周辺の郷土伝承に類話が散見され、空中怪異と境界怪異の中間に立つ存在と論じられたと伝えられる。
山梨県の郷土誌、甲斐民俗学会の調査記録、村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005 年)、国際日本文化研究センター「怪異・妖怪伝承データベース」に類話の収録が見える。江戸期の絵巻・随筆では特定の章節は確認しがたく、口承伝承として伝えられる怪異である。
近縁怪異として「天井下り」「釣瓶落(つるべおとし)」「夜行さん」と空中・上方からの怪異主題を共有する。釣瓶落としは京都・近畿で広く知られた木の上から落下する怪異で、天づるしは同系の主題が甲斐国(山梨県)の山間部で「吊るされた異物」として変奏された位置づけと論じられたと伝えられる。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
天づるしに関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005年)など、各地の妖怪名と伝承を整理する二次資料。