
古事記
八十禍津日神は、禊の場面に現れる禍の神として、穢れと祓いの文脈を分けて理解する手がかりになる神格。
八十禍津日神(やそまがつひのかみ)は、『古事記』禊段に記される天津神。伊邪那岐命が黄泉国の穢れを禊ぐ際に生じた禍(まが)の神格で、罪・穢れ・災いの源を象徴する神。「八十」は多数を意味し、あらゆる禍の総体を表す。
『古事記』上巻 禊段に「其の穢繁き国に到りし時に、汙垢に因りて成りませる神の御名は、八十禍津日神。次に大禍津日神」と記される。伊邪那岐命が黄泉国から帰還し、筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原で禊を行った際、最初に成った神格として位置づけられる。続いて禍を直す働きの神直毘神・大直毘神が成る。
父は伊邪那岐命(禊による生成神格)。同時に成った神に大禍津日神(おおまがつひのかみ)、続いて成る神直毘神・大直毘神・伊豆能売と対をなす。穢れの神格としては八十禍津日神・大禍津日神の二柱、祓いの神格としては直毘神三柱が一対の構造を成し、禊段全体で罪穢れと祓いの神統が完結する。
特定の主祭神社は少ないが、六月晦日・十二月晦日の大祓に唱えられる『大祓詞』に罪穢れの源として引かれ、祓えの祭祀の前提となる神格として宮中・神社祭祀で記憶される。直毘神を祀る社では一対として八十禍津日神の名が併せて唱えられる例があり、穢れと祓いの神統を完結させる位置を占める。
八十禍津日神 やそまがつひのかみ
一次文献國學院大學 古典文化学事業「神名データベース」八十禍津日神。
https://kojiki.kokugakuin.ac.jp/shinmei/yasomagatsuhinokami/古事記 上巻 禊祓段
一次文献太安万侶(撰)
八十禍津日神の登場場面、系譜、神名の確認に用いる一次文献。
神道・神名辞典 禍津日神項
二次資料八十禍津日神の名称、祭祀上の性格、関連社寺を確認するための二次資料。