
伝承
垢嘗伝承は大阪府を主な舞台として整理する伝承。垢嘗との関係を持ち、土地と怪異を結ぶ入口になる。
垢嘗(あかなめ)伝承は、夜更けの古びた風呂場に現れて、湯垢・水垢を長い舌で嘗(な)めとるという、姿の小さな妖怪の譚である。鳥山石燕(とりやませきえん)が『画図百鬼夜行』に収めた図像が広く知られ、頭が赤く、痩せた裸身、爪と髪が長く、舌を伸ばして垢を嘗める姿で描かれる。怪我をするわけでも人を取り殺すわけでもなく、ただ「掃除を怠ると現れる」という不快さの権化として配置される。家事の怠惰を戒める教訓妖怪の典型で、近世の都市生活と公衆衛生観念の隙間から立ち上がる怪異である。
物語は二段で構成される——(一)夜更けの古い湯殿・洗い場での出現、(二)垢の嘗めとりと家人の発見・恐怖。物語の起承転結はあえて希薄に保たれ、「いる」ことそのものが恐怖の核となる構造で、ぬらりひょん・塗壁などと並ぶ「目撃の妖怪」型に属する。江戸の都市怪異の家内バリエーションとして位置づく。
出現地は大阪府・京都府・江戸(東京都)など、近世都市の湯屋(ゆや)・古家の風呂場が中心。家屋の特定部位(湯殿)に紐づく怪異という点で、便所の加牟波理入道(かんばりにゅうどう)や台所の天井下りと同類で、家内境界の妖怪体系を成す。
鳥山石燕『画図百鬼夜行』(安永五年・1776 年)に「垢嘗」の図と詞書がある。佐脇嵩之(さわきすうし)『百怪図巻』(享保二十年・1735 年頃)にも先行する類似妖怪「赤垢嘗」の図像が見える。江戸期妖怪絵巻群の標準的レパートリーとして近世怪談集・絵入り板本に頻出する。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
垢嘗伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/垢嘗伝承 - Wikipedia 日本語版
二次資料Wikipedia contributors
垢嘗伝承の概要に関する二次整理。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9E%A2%E5%98%97%E4%BC%9D%E6%89%BF