
伝承
化け鯨伝承は島根県を主な舞台として整理する伝承。化け鯨との関係を持ち、土地と怪異を結ぶ入口になる。
化け鯨(ばけくじら)伝承は、島根県沖合の日本海に現れたとされる、骨だけの巨大な鯨の幽霊譚である。江戸期、ある夜、漁師たちが海上で異様な光に導かれて沖へ出ると、骨格だけになった鯨が海面に浮かび、その周囲に魚や鳥の異形の眷属が群れていた、と伝えられる。化け鯨は鯨漁で殺された鯨の集合的怨霊と解され、人を直接襲うことはないが、その姿を見た者は重病・不漁・家運の傾きに見舞われると語られる。鯨漁を生業とする沿岸集落の罪悪感と畏怖が、骨の幽霊として像を結んだ近世海洋怪異の代表例である。
物語は三段で構成される——(一)夜半の沖合での異様な光の出現、(二)骨の鯨と異形の眷属群の現認、(三)目撃者への災厄の波及。鯨漁の文化(捕鯨組・鯨組)と仏教的供養観(鯨墓・鯨位牌)の交点に立つ伝承で、山口県・和歌山県・千葉県の捕鯨地にも類話が分布する。
中心となる伝承圏は島根県浜田市・益田市など石見地方の日本海沿岸と、隠岐島周辺。鯨漁が盛んだった近世捕鯨地に共通する伝承で、山口県長門市・和歌山県太地町など全国の捕鯨集落に類縁の鯨幽霊・鯨墓信仰が見られる。
鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』(安永十年・1781 年)には類縁の海怪が収められる。江戸末期の妖怪本『絵本百物語(桃山人夜話)』天保十二年(1841 年)に「化鯨」の項目がある。島根県教育委員会編『島根県史 民俗編』、近代捕鯨史研究の二次文献にも詳しい。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
化け鯨伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/化け鯨伝承 - Wikipedia 日本語版
二次資料Wikipedia contributors
化け鯨伝承の概要に関する二次整理。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%96%E3%81%91%E9%AF%A8%E4%BC%9D%E6%89%BF