
伝承
絡新婦伝承は静岡県を主な舞台として整理する伝承。絡新婦との関係を持ち、土地と怪異を結ぶ入口になる。
絡新婦(じょろうぐも)伝承は、長く生きた女郎蜘蛛(ジョロウグモ)が美女に化け、若い男を糸で絡め取って食らうとされる蜘蛛の妖怪譚である。静岡県の伝承では、賤機山(しずはたやま)の渓谷や安倍川(あべがわ)上流の淵に棲み、樵や旅人の前に美女として現れる。馴染んで通ううちに体に蜘蛛の糸が絡み始め、ある日、斧を切り株に置こうとした隙に糸で淵へ引き込まれそうになるが、斧が古い切り株に絡んで動かず、男は本性を悟って逃げる、という筋を取る。佐賀の女郎蜘蛛伝承と同系統だが、静岡では特に淵と古木の組み合わせが定型化している。
物語は三段で構成される——(一)淵での美女との邂逅と通い、(二)糸の絡みつきと斧・切り株を介した正体露見、(三)逃走と古木の身代わり(古木が代わりに引き込まれる)。誘惑と捕食、人と虫の境界という三重の他者性を蜘蛛に投影する近世怪異絵巻の標準型である。
中心となる伝承圏は静岡県静岡市の賤機山・安倍川流域。長野県の戸隠山、新潟県の越後山地、佐賀県の北部山地にも類話が分布する。「ジョロウグモ」という実在の蜘蛛(コガネグモ科)の華やかな体色が、美女との同一視を支える生物学的下地となる。
鳥山石燕『画図百鬼夜行』(安永五年・1776 年)に「絡新婦」の図と詞書がある。鈴木牧之(すずきぼくし)『北越雪譜(ほくえつせっぷ)』天保八年(1837 年)にも越後の絡新婦類話が収められる。江戸期怪談集『今昔画図続百鬼』、各地方の民俗誌にも類話の言及がある。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース
一次文献国際日本文化研究センター
絡新婦伝承に関わる怪異・伝承資料の参照入口。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/絡新婦伝承 - Wikipedia 日本語版
二次資料Wikipedia contributors
絡新婦伝承の概要に関する二次整理。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%A1%E6%96%B0%E5%A9%A6%E4%BC%9D%E6%89%BF