
伝承
戸隠山天岩戸伝承は、長野県長野市を入口にたどる伝承。長野県長野市を代表地点として、神話・創世の文脈で語り継がれる物語を整理する
戸隠山天岩戸伝承(とがくしやまあまのいわとでんしょう)は、信濃国の戸隠山(とがくしやま、標高 1,904 m)を、天岩戸神話に登場する岩戸の比定地とする山岳信仰伝承である。『古事記』上巻天岩戸段で、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が天岩戸に隠れて世界が暗闇となり、神々の議定によって天宇受売命(あめのうずめのみこと)の神懸かりと天手力男神(あめのたぢからおのかみ)の力技によって岩戸が開かれる。戸隠山伝承では、このとき天手力男神が引き開けた岩戸が、はるか信濃の山地に飛来して山となったと語る。山中には九頭龍権現(くずりゅうごんげん)の伝承が古層として並走し、戸隠は神道・修験道・仏教の三層が重なる中世以来の霊場として広く知られた。
伝承は三段で構成される——(一)天岩戸神話の中心場面(天手力男神の岩戸引き)、(二)岩戸の信濃飛来と山の成立、(三)九頭龍権現信仰との習合と五社体制の確立。記紀神話を在地の山岳信仰に重ね合わせる山岳縁起の典型で、白山比咩神縁起や戸隠神社縁起・那智滝縁起と並んで、中世修験道による「神話の地誌化」を象徴する伝承群となる。戸隠の天手力男神信仰は、武芸・力技の神格として中世武家層に広く崇敬された。
中心比定地は長野県長野市戸隠(とがくし)の戸隠神社(とがくしじんじゃ)。奥社(天手力男神)・中社(天八意思兼命)・宝光社(天表春命)・九頭龍社(九頭龍大神)・火之御子社(天鈿女命)の五社で構成される。奥社参道は樹齢四百年以上の杉並木で知られ、長野県の天然記念物に指定される。戸隠山は古来修験道の修行地で、戸隠講(とがくしこう)は近世の信濃・上州・武州一帯で広範に組織された。
『戸隠山顕光寺流記(とがくしやまけんこうじりゅうき)』(鎌倉末〜南北朝期成立、戸隠の中世縁起)、『戸隠山絵詞』、『大日本国法華験記』、『元亨釈書』。記紀の天岩戸段は『古事記』上巻 天岩戸段(和銅五年・712 年)、『日本書紀』神代上 第七段(養老四年・720 年)。戸隠神社社伝、長野県教育委員会の地域資料、長野市立博物館の研究紀要を参照する。
古事記・日本書紀関連資料 戸隠山天岩戸伝承
一次文献古事記・日本書紀関連資料 戸隠山天岩戸伝承に基づく戸隠山天岩戸伝承の代表的な典拠整理。
古事記・日本書紀
二次資料古事記・日本書紀などを参照した戸隠山天岩戸伝承の地域的受容と異伝の補助確認。
あなたの縁
読了した由緒を起点に、あなた自身の繋がりをひらきます。
名称や説話、図像、儀礼に重なる具体モチーフです。