
伝承
土蜘蛛を退治する筋を持つ記紀・説話系の伝承。葛城山周辺の山地伝承と結びつく。
土蜘蛛退治(つちぐもたいじ)は、大和朝廷の王権が「土蜘蛛(つちぐも)」と呼ばれた異形の在地集団を討伐する伝承群である。『日本書紀』神武天皇紀には、神武天皇(じんむてんのう)が大和の葛城(かつらぎ)で「身短くして手足長き、侏儒(ひきうど)に似たる」土蜘蛛を撃ち、葛で網を編んで覆い殺した記事が見える。『日本書紀』景行天皇紀には、九州の地方土蜘蛛討伐記事が複数収められる。一方、平安後期以降は怪異譚として再構成され、源頼光(みなもとのよりみつ)が病に伏した折、夜更けに現れた怪僧が糸を放って頼光を捕えようとし、名刀・膝丸(ひざまる)で斬りつけたところ、北野の塚へ逃げ込んだ巨大な土蜘蛛を退治するという筋が定着する。
伝承は二層に分かれる——(一)記紀における在地勢力討伐の政治史的層、(二)平安末以降の妖怪退治譚の層。前者は王権による国土平定の物語として位置づけられ、後者は鬼退治譚と同型の頼光四天王武勇譚に組み込まれる。「土蜘蛛」という呼称が、政治的他者から怪異存在へ意味転換していく過程そのものが、この伝承圏の主題となる。
記紀系の比定地として奈良県御所市・葛城市にまたがる葛城山(かつらぎやま)一帯が知られ、葛城一言主神社(御所市森脇)周辺には土蜘蛛塚と伝わる地点がある。妖怪退治譚の伝承地は京都市北区紫野の上品蓮台寺(じょうぼんれんだいじ)境内および北野天満宮裏手とされ、能『土蜘蛛』はこの京都伝承を題材とする。
『日本書紀』神武天皇即位前紀および景行天皇十二年・十三年条(養老四年・720 年)。平安末以降の妖怪退治譚は『土蜘蛛草紙絵巻』(鎌倉末〜南北朝期成立、東京国立博物館所蔵の国指定重要文化財)、能『土蜘蛛』(観世小次郎信光作)、御伽草子諸本に展開する。近世の『前太平記』にも頼光土蜘蛛退治譚が再構成されて収められる。
日本書紀 土蜘蛛記事
一次文献舎人親王ら(撰)
日本書紀に見える土蜘蛛記事。土蜘蛛退治伝承の一次資料。
土蜘蛛 - Wikipedia 日本語版
二次資料Wikipedia contributors
土蜘蛛退治伝承に関する二次整理。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%9F%E8%9C%98%E8%9B%9B