
水辺の怪異
泥田坊は、北海道旭川市を入口にたどる怪異。田や泥に結びつく怪異として語られる
泥田坊(どろたぼう)は、荒れて顧みられなくなった田から黒い泥にまみれた上半身だけの男が現れ、「田を返せ、田を返せ」と叫ぶ怪異。土地への執着・先祖代々の田を粗末にしたことへの戒めとして語られる、近世図像妖怪の代表格の一つ。
鳥山石燕『今昔画図続百鬼』(安永八年、1779 年)に「泥田坊」として図示され、賛文に「ある翁、生涯田を作りて子に伝えしが、子は酒に耽りて田を売りしかば、翁の念、夜な夜な現れて田を返せと叫ぶ」という由来譚が示される。田の境界・耕作・相続をめぐる執心が妖怪化した主題で、近世農村社会の土地観と密接に結びつく。北海道は近代以降の入植地であり、本怪異の伝承地としての歴史的根拠は限定的。
鳥山石燕『今昔画図続百鬼』(1779 年)が文献初出として広く知られる。近世の農書・地誌には、田の執心譚として類話が散見される。近代以降は村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005 年)と国際日本文化研究センター「怪異・妖怪伝承データベース」に体系化されている。
田・耕作と結びつく怪異として「田の神(たのかみ)」(信仰的対立面)、「案山子(かかし)の付喪神」と系譜を共有する。土地執心型では「地縛霊」「化け地蔵」とも近縁。北海道の固有地域譚としての記録はなく、近世本州の田の付喪神・農耕怪異が全国に流布した形として整理される。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース 泥田坊
一次文献国際日本文化研究センター
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース 泥田坊に基づく泥田坊の代表的な典拠整理。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
日本妖怪大事典などを参照した泥田坊の地域的受容と類縁語の補助確認。
名称や説話、図像、儀礼に重なる具体モチーフです。