
付喪神
鳴釜は、神奈川県鎌倉市を入口にたどる怪異。釜が鳴る音や占いの語りと結びつく器物の怪異として語られる
鳴釜(なりかま)は、釜が独りでに鳴る家屋・台所の怪異、および釜の音で吉凶を占う神事の主体。古い釜に宿った付喪神として語られる場合と、神事の依代として神聖視される場合の二重性を持つ。吉備津神社(岡山県岡山市北区)の「鳴釜神事」が著名で、神事の起源は温羅伝承と結びつく。
鳥山石燕『百器徒然袋』(1784 年)に「鳴釜」として図示され、古釜から角を生やした牛頭の妖が立ち上る姿が描かれる。賛文には吉備津宮の鳴釜神事との関連が示される。吉備津神社の鳴釜神事では、釜の上に蒸籠を置き、湯を沸かして釜が鳴る音の大小・長短で吉凶を占う。神事は『吉備津宮縁起』に語られる温羅退治譚を起源とし、現代まで斎行される。家屋怪異としての鳴釜は、深夜に台所の釜が音を立てる、釜から声がするといった筋で各地に伝わる。
吉備津神社『吉備津宮縁起』に鳴釜神事の起源譚が伝わる。鳥山石燕『百器徒然袋』(天明四年、1784 年)に図像が収録される。上田秋成『雨月物語』巻三「吉備津の釜」(1776 年)は、吉備津神社の鳴釜神事を物語の核に据えた怪異譚として広く読まれた。近代以降は柳田國男・折口信夫らが竈神信仰との関係を論じ、村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005 年)に整理される。
器物の付喪神という枠組みでは「茶釜(分福茶釜)」「五徳猫」と近縁し、台所・竈の怪異の系譜に並ぶ。竈神(こうじん)信仰、火の神信仰、神事としての鳴釜と、家屋怪異としての鳴釜が同名で複合し、神聖と怪異の境界に位置する点が特徴。神奈川県の固有地域譚は限定的で、石燕図像と吉備津神事を起点とする全国的な怪異として整理される。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース 鳴釜
一次文献国際日本文化研究センター
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース 鳴釜に基づく鳴釜の代表的な典拠整理。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
日本妖怪大事典などを参照した鳴釜の地域的受容と類縁語の補助確認。
名称や説話、図像、儀礼に重なる具体モチーフです。