
伝承
余呉湖の羽衣伝説は滋賀県長浜市を代表地点として整理する伝承。湖畔の羽衣と天女をめぐる近江の伝承として語られ、出典、土地、関連エンティティを分けてたどれる。
余呉湖(よごこ)の羽衣伝説は、滋賀県長浜市余呉町の余呉湖畔に伝わる、近江北部を代表する羽衣伝承である。湖畔の柳の木に羽衣を掛けて水浴をしていた天女が、地上の漁師・伊香刀美(いかとみ)に羽衣を隠され、地上での結婚を余儀なくされた。天女は四子(一説に一男一女・三女)を儲けたが、後に隠された羽衣を発見して天に帰り、子は地上に残されて伊香連(いかのむらじ)一族の祖となった、と伝えられる。『近江国風土記』逸文に類話が記され、駿河国の三保松原(みほのまつばら)の羽衣伝説、丹後国の比治山(ひじやま)羽衣伝説と並んで「日本三大羽衣伝説」の一つに数えられる。
物語は三段で構成される——(一)湖畔の柳の木への羽衣掛けと水浴中の盗取、(二)地上結婚と四子の出生、(三)羽衣発見と天女の帰天・子孫の系譜化(伊香連の祖)。沖縄の久米の羽衣伝承と並ぶ「氏族祖系神話としての羽衣伝承」型で、丹後の比治山版(豊宇賀売命との関係)と近接する。湖と空、地上と天上を結ぶ垂直軸の象徴空間として、近江北部の湖沼信仰圏に位置づく。
比定地は滋賀県長浜市余呉町の余呉湖(よごこ、別名・鏡湖)。賤ヶ岳(しずがたけ、賤ヶ岳の戦いの古戦場)の北麓に位置するカルデラ湖で、水深 13m・周囲 6.4km の小さな湖。湖畔に「天女の衣掛柳(ころもかけやなぎ)」と呼ばれる柳の木が現存し、湖畔の伊香具神社(いかぐじんじゃ、式内社)が伊香連の祖を祀る氏神社として鎮座する。
『近江国風土記』逸文(『帝王編年記』所引、奈良時代の風土記の逸文)。『日本書紀』神代上、『丹後国風土記』比治山段、『駿河国風土記』三保松原段の関連伝承。滋賀県教育委員会編『滋賀県史 民俗編』、長浜市史、伊香具神社社伝、余呉町教育委員会の関連資料に詳しい。
近江国風土記逸文
一次文献近江国風土記逸文に見える余呉湖の羽衣伝説の代表的な典拠。
日本伝説大系
二次資料日本伝説大系など、余呉湖の羽衣伝説の伝承差や地域的受容を整理する二次資料。
あなたの縁
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