
鬼
火車は、奈良県奈良市を入口にたどる怪異。火や車の姿で死者の場面に現れる怪異として語られる
火車(かしゃ)は、葬列を襲い棺から死体を奪い去るとされる猫型の妖怪、または火を纏った車の姿の地獄の使い。生前悪業を重ねた者の遺体を地獄に運ぶ、あるいは雷雨の中で棺を空に吹き上げると語られる。中国仏教の地獄の獄卒に由来する仏教系怪異と、年経た猫の妖怪化という民俗系怪異の二層を持つ。
代表的な筋は、葬式・墓地・野辺送りの途中、突然黒雲と雷雨が起こり、棺から遺体が空に吸い上げられて消えるというもの。猫型の妖怪として描かれる場合は、家で飼われていた老猫が葬式の最中に大きく化けて遺体を奪うとされる。火車除けの呪い・棺の上に剃刀を置く・南天の枝を添えるなどの民俗が各地に伝わる。奈良・畿内・東北・北陸など全国に分布する。
仏教経典『往生要集』(源信、985 年)に火の車の地獄記事があり、古層の源流をなす。中世以降は鎌倉新仏教の地獄絵に頻出し、近世には鳥山石燕『画図百鬼夜行』陰の巻(1776 年)に「火車」として猫型の図が示される。竹原春泉斎画『絵本百物語』(桃山人著、1841 年)にも採録される。近代以降は柳田國男系の民俗学が火車除けの民俗を整理し、村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005 年)に体系化される。
猫型の妖怪としては「化け猫」「猫又」と近縁し、年経た猫の妖怪化譚の頂点として位置づけられる。仏教系の地獄の使いとしては「黒縄」「鬼」と並置される。地域差として、火車を「魔の風」「葬式風」と呼ぶ地方、「火車猫」と呼ぶ地方など、呼称と像が広く分岐する。奈良・畿内では仏教系の火の車像、東北・北陸では猫型の像が優勢の傾向にある。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース 火車
一次文献国際日本文化研究センター
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース 火車に基づく火車の代表的な典拠整理。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
日本妖怪大事典などを参照した火車の地域的受容と類縁語の補助確認。
名称や説話、図像、儀礼に重なる具体モチーフです。