
伝承
江戸人面樹伝承は、東京都台東区を入口にたどる伝承。東京都台東区を代表地点として、怪異・変化の文脈で語り継がれる物語を整理する
江戸人面樹伝承は、深山幽谷に生え、人の顔を実とする奇樹・人面樹(じんめんじゅ、人面果)をめぐる近世怪異譚である。樹に成る果実が人の顔の形をしており、人が前を通って何かを話しかけると顔を綻ばせて笑い、あまりに笑いすぎると地に落ちて朽ち果てると伝えられる。中国の博物書『山海経(せんがいきょう)』『酉陽雑俎(ゆうようざっそ)』に登場する大食国の人面果に由来する博物学的怪異が、江戸期の本草学・博物趣味のなかで日本に取り込まれ、鳥山石燕(とりやませきえん)の妖怪画集にも描かれる。
物語の典型場面は三つで構成される——(一)深山の奇樹の発見、(二)果実が人の顔の形を成し笑う様、(三)笑いすぎての落果・腐朽。中国伝来の博物学的怪異が江戸博物学(本草学)と妖怪文化のなかで日本固有の怪異譚へと再構成された典型例で、平賀源内(ひらがげんない)の『物類品隲』、栗本丹洲(くりもとたんしゅう)の博物図譜文化の周辺で愛玩された。
特定の比定地を持たず、深山奥地の架空の樹として描かれる。鳥山石燕の絵では中国風の山水の中に配される。江戸の博物趣味の中心地である湯島聖堂、本草学者の集う界隈、本所深川の文人サロン等が伝承の流布した文化的舞台となる。台東区(湯島・上野)の博物文化圏が伝承の継承地として位置づけられる。
中国博物書『山海経』(前漢以前撰)海外南経・大荒南経、段成式『酉陽雑俎』(唐代)に原形が見える。日本では鳥山石燕『今昔画図続百鬼』(安永八年・1779 年刊)「人面樹」項、平賀源内・栗本丹洲ら江戸博物学関連著述に取り上げられる。井上円了『妖怪学講義』、現代では小松和彦編の妖怪研究、博物学史研究が二次整理として位置づける。
怪談・怪異伝承資料 江戸人面樹伝承
一次文献怪談・怪異伝承資料 江戸人面樹伝承に基づく江戸人面樹伝承の代表的な典拠整理。
日本怪異妖怪事典
二次資料日本怪異妖怪事典などを参照した江戸人面樹伝承の地域的受容と異伝の補助確認。
あなたの縁
読了した由緒を起点に、あなた自身の繋がりをひらきます。
名称や説話、図像、儀礼に重なる具体モチーフです。