
伝承
肥後件伝承は、熊本県熊本市を入口にたどる伝承。熊本県熊本市を代表地点として、怪異・変化の文脈で語り継がれる物語を整理する
肥後件伝承(ひごくだんでんしょう)は、肥後国(現在の熊本県)を中心に九州に伝わる、牛から生まれて人面を持つ予言獣「件(くだん)」をめぐる伝承である。件は牛の体に人間の顔を持ち、生まれてから数日のうちに、近く起こる飢饉・疫病・戦乱などの大事件を予言してから死ぬ。予言は的中し、その上で死に至るとされ、「件の如し」という慣用表現が生まれたとも伝わる。江戸後期から明治・大正・昭和の戦時期にかけて、件の出現を伝える瓦版・ビラが全国に出回り、件の絵姿は災厄予言と災難除(さいなんよけ)の護符として家屋に貼られた。肥後国は件の出生地とされる代表的地域で、熊本県内では複数の藩政記録に類例が記録される。
件伝承は三段で構成される——(一)異常出生(牛から人面の子が生まれる)、(二)短時間での予言(飢饉・疫病・戦乱の的中)、(三)絵姿の流布と災難除護符化。「異形の予言獣」という近世怪異の典型例で、瓦版という近世大量印刷メディアの発達と並走して伝承が拡張した点が他の妖怪伝承と異なる。「件の如し」という慣用句が件伝承から派生したとする説が広く流布する。戦時下には件の絵姿が家屋の災難除として再活性化し、近現代の災害観念と結びついた。
中心伝承地は熊本県熊本市・人吉市・天草など旧肥後国一帯。福岡県・宮崎県・大分県にも類話が散在し、九州全域が件伝承圏を成す。明治末年に岡山県・島根県でも類例の瓦版が記録され、件伝承は近世末から近代にかけて全国化した。熊本県立図書館・熊本博物館・人吉歴史民俗資料館に件関連の瓦版・絵姿が所蔵される。
江戸後期から昭和初期にかけての瓦版・ビラが第一次史料で、複数の図書館・郷土資料館に断片が現存する。湯本豪一『日本幻獣図説』、湯本豪一『明治妖怪新聞』、京極夏彦・多田克己『妖怪画本 狂歌百物語』、京極夏彦・村上健司『日本妖怪大事典』に件項目が整理される。熊本県教育委員会の民俗調査報告、九州大学附属図書館の郷土史料コレクションを二次整理として参照する。
怪談・怪異伝承資料 肥後件伝承
一次文献怪談・怪異伝承資料 肥後件伝承に基づく肥後件伝承の代表的な典拠整理。
日本怪異妖怪事典
二次資料日本怪異妖怪事典などを参照した肥後件伝承の地域的受容と異伝の補助確認。
あなたの縁
読了した由緒を起点に、あなた自身の繋がりをひらきます。
名称や説話、図像、儀礼に重なる具体モチーフです。