
伝承
常陸ろくろ首伝承は、茨城県水戸市を入口にたどる伝承。茨城県水戸市を代表地点として、怪談の文脈で語り継がれる物語を整理する
常陸ろくろ首伝承(ひたちろくろくびでんしょう)は、常陸国(現在の茨城県)に伝わる、夜になると首が伸びる女の怪異譚である。江戸期の怪談集および地域伝承では、ある家の若い嫁が、家人の寝静まった夜更けに行燈の油を舐めるため首だけが胴体から伸び長く動き回るのを目撃される。ある夜、家人が首の留守の胴体を別の場所に移したため、首は元の胴に戻れず、嫁は命を落とすに至る。別の系統では、首が伸びるが胴から離れることはなく、夜の家中を伸びた首が徘徊するという「抜首」と区別される「伸首(のびくび)」型として伝わる。
ろくろ首伝承は近世怪談の典型的な「夜の家」怪異で、構造は三段——(一)昼の日常と夜の異常の二相、(二)首と胴の分離(または異常な伸長)、(三)目撃と帰還の失敗による破綻。中国の干宝『捜神記』巻十二「飛頭蛮」を遠い祖型とし、日本では『百物語』系怪談本で全国化した。常陸国は『常陸国風土記』以来、辺境の異形者譚を語る土壌を持ち、関東圏の怪異伝承の発信地となる文学的位置を保ち続けた。女・夜・家内という三要素は、近世女性の身体と内空間の不可視性をめぐる文化的不安を反映する。
比定地は茨城県水戸市・常陸太田市・笠間市など旧常陸国一帯。特定の家屋に比定する伝承はなく、複数の家筋・寺院に類話が散在する。江戸期の見世物興行では「ろくろ首」が見世物芸として常陸出身を称することがあり、茨城県内の地域博物館・民俗資料館で当該資料が展示される。常陸太田市・水戸市の地域史料に複数の異伝が記録される。
中国の干宝『捜神記』巻十二「飛頭蛮」、平安期の『和名類聚抄』、江戸期の『太平百物語』(享保十七年・1732 年)、『絵本百物語(桃山人夜話)』(天保十二年・1841 年、桃山人作・竹原春泉画)、井原西鶴『西鶴諸国はなし』。常陸国に特化した伝承としては『新編常陸国誌』(中山信名・栗田寛、安政六年・1859 年成立)、茨城県教育委員会の民俗調査報告、水戸市立博物館の地域資料を参照する。
怪談・怪異伝承資料 常陸ろくろ首伝承
一次文献怪談・怪異伝承資料 常陸ろくろ首伝承に基づく常陸ろくろ首伝承の代表的な典拠整理。
日本怪異妖怪事典
二次資料日本怪異妖怪事典などを参照した常陸ろくろ首伝承の地域的受容と異伝の補助確認。
あなたの縁
読了した由緒を起点に、あなた自身の繋がりをひらきます。
名称や説話、図像、儀礼に重なる具体モチーフです。