
伝承
江戸手の目伝承は、東京都新宿区を入口にたどる伝承。東京都新宿区を代表地点として、怪談の文脈で語り継がれる物語を整理する
江戸手の目(てのめ)伝承は、両手のひらに目を持つ盲目の老人姿の妖怪・手の目が、江戸の墓地や寺の境内に現れて夜歩きの者を脅かすとされる怪異譚である。京都の阿弥陀ヶ峰(あみだがみね)に出たとされる原型の手の目が江戸へ移入された地方変種で、新宿区の寺町(牛込・四ツ谷・市谷の寺院密集地)に現れたと伝えられる。盲目の老人が夜道で「手を貸してくれ」と頼んでくる、応じて手を取ると老人の手のひらの目がぎょろりと開いて旅人を見つめる、という筋を取る。
物語は二段の「変身露見構造」で組み立てられる——(一)助けを求める無害な老人の擬態、(二)手のひらの目の露見と恐怖。盲目という身体的弱さの擬態が恐怖の前段を担い、目という視覚器官の異所配置(手のひら)がクライマックスを担う。視覚と触覚の倒錯を直接視覚化する江戸怪異絵巻の定型に連なる。
中心となる伝承圏は東京都新宿区の牛込・四ツ谷・市谷を結ぶ江戸の寺町と、文京区小石川の墓地帯。京都市東山区の阿弥陀ヶ峰墓地が原型の伝承地で、関西から江戸への怪異伝播の例として扱われる。
鳥山石燕『画図百鬼夜行』(安永五年・1776 年)に「手の目」項目の図と詞書が収められる。井原西鶴『新可笑記』、近世の江戸怪談集にも類話の言及が散見されると伝えられる。地方口承伝承として記紀には登場しない。
怪談・怪異伝承資料 江戸手の目伝承
一次文献怪談・怪異伝承資料 江戸手の目伝承に基づく江戸手の目伝承の代表的な典拠整理。
日本怪異妖怪事典
二次資料日本怪異妖怪事典などを参照した江戸手の目伝承の地域的受容と異伝の補助確認。