
家の怪異
黒手は、東京都墨田区を入口にたどる怪異。水場や家のすき間から現れる手の怪異として語られる
黒手(くろて)は、家の柱の隙間・井戸の縁・布団の下から、黒く長い手だけが伸びてきて人を引きずり込もうとする怪異。姿の全体は見えず、ただ黒い手だけが現れる点が特徴で、家屋内の見えない徴・隙間の恐怖を妖怪化した近世家屋怪異の系統。
代表的な筋は、夜半に寝床にいると布団の下から黒い手が伸びてきて足を掴む、井戸を覗くと中から黒い手が伸びて引き込もうとする、というもの。江戸の長屋・武家屋敷の怪異譚として近世の怪談集に散見される。家屋の閉じた空間に潜む不可視の怪異という主題で、武蔵国・江戸の都市怪異の中で語られた。
近世の怪談集『諸国百物語』『古今百物語評判』『耳袋』(根岸鎮衛、18 世紀末〜19 世紀初)に類話が散見される。鳥山石燕の図像群には独立項目としては含まれないが、近接する「手の目(てのめ)」「手長足長」など手を主題とする怪異と図像系譜を共有する。近代以降は村上健司編著『日本妖怪大事典』(角川書店、2005 年)と国際日本文化研究センター「怪異・妖怪伝承データベース」に整理されている。
手だけの怪異として「手の目」(鳥山石燕『画図百鬼夜行』、掌に目を持つ盲僧の幽霊)、「腕白(うでじろ)」、九州の「手取り婆」と系譜を共有する。井戸から現れる主題では「井戸の手」(江戸・京都の都市怪談)と接続する。東京都の固有地域譚としての記録は限定的で、近世都市怪異の一系統として整理される。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース 黒手
一次文献国際日本文化研究センター
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース 黒手に基づく黒手の代表的な典拠整理。
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/日本妖怪大事典
二次資料村上健司 編著
日本妖怪大事典などを参照した黒手の地域的受容と類縁語の補助確認。
名称や説話、図像、儀礼に重なる具体モチーフです。